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本日は情報処理技術者の試験日

 本日は日曜日で図書館に来て仕事をしているが、やけに人が少ない。4月の新学期に入り学生の試験シーズンも一段落したためと思うが、閑散としている。私も引き続き集中するときは図書館を利用するようにしている。そんな中、本日は全国でIPA主催の以下のIT資格の試験が行われている。

 この中で、よく中小企業診断士とセットで取得する方が多い「ITストラテジスト」について触れてみたい。

ITストラテジストは「CIO/CTO/ITコンサル」向けの資格

概要

 IPAの試験概要には、資格の対象者を以下のように位置付けている。

 経営戦略に基づいてIT戦略を策定し、ITを高度に活用した事業革新、業務改革、及び競争優位を獲得する製品・サービスの創出を企画・推進して、ビジネスを成功に導くCIOやCTO、ITコンサルタントを目指す方

(引用)「ITストラテジスト試験」(IPA)
https://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/st.html

スキル要件

 また、求められるスキル水準として以下の通りである。

事業企画、業務改革推進、情報化企画、製品・サービス企画などの部門において、ITを活用した基本戦略の策定・提案・推進を遂行するため、次の知識・実践能力が要求される。

1.事業環境分析、IT動向分析、ビジネスモデル策定への助言を行い、事業戦略を策定できる。また、事業戦略の達成度を評価し、経営者にフィードバックできる。
2.対象となる事業・業務環境の調査・分析を行い、情報システム戦略や全体システム化計を策定できる。また、情報システム戦略や全体システム化計画を評価できる。
3.対象となる事業・業務環境の調査・分析を行い、全体システム化計画に基づいて個別システム化構想・計画を策定し、適切な個別システムを調達できる。また、システム化構想・計画の実施結果を評価できる。
4.情報システム戦略や改革プログラム実施の前提条件を理解し、情報システム戦略実現のモニタリングとコントロールができる。また、情報セキュリティリスクや情報システム戦略実現上のリスクについて、原因分析、対策策定、対策の実施などができる。

 基本的には、CIOやCTOやITコンサルを想定された資格といえる。
また、プロジェクトマネジメントがシステム開発以降を担う役割に対し、さらにその上流である「システム化構想」から「フィージビリティの検証(PoC)」から「投資戦略と評価」といった部分を担う役割といえる。また、「戦略実現のモニタリングとコントロール」とあるように、完遂まで責任を負う役割も含まれている。

ITストラテジストの取得メリット

 企業の戦略を担うという意味では中小企業診断士とレイヤーが同じなので親和性が高い。
取得することによるメリットは以下の点かと思う。

 ・転職時に有利
 ・集客時に有利

 名刺やキャリアシートに記載できるため、一定の難易度の資格をパスしたという評価が得られる。IT会社間での転職ではさほどメリットはないかもしれないが、コンサル会社などへ転職する際は有利だと思う。また、中小企業診断士が企業を支援する際など、中小企業社長に対してITのスペシャリストというイメージを与えるという意味で集客への一定の効果もあると思う。 

ITストラテジスト試験の問題

IT業界内での評価は必ずしも高くない

 上記のメリットはあるが、IT業界内での当該資格の評価は高いとは言えない。次の話題ともつながるが、ITの資格自体がそこまで業界内で重視されていないことが一番大きい。

 ITはスキルを一概に評価することが難しい。というのも、以前にも書いたが、マネジメントしかりプログラミングしかり技術や手法が多岐にわたる点や、いかに教科書的ではなく臨機応変に困難を乗り越えてきたかといった経験や、人間力といったヒューマンスキルも多分に業務として必要となるためだ。
私もよく人材採用のためスキルシートを見る機会が多いが、正直、実際に仕事をしてみないと評価ができない場合が多い。

 そのため、IT業界内では資格自体の取得を軽視する風潮がある。会社内に資格奨励金を出す場合があり、その場合は積極的に受ける人はいる。なので、まったく無意味ではないが、さほど重要視されていないといった方が良いかもしれない。なので、ITストラテジストについてもほぼ認知されていない。

試験制度の問題

 試験問題は、午前Ⅰ、Ⅱ、午後Ⅰ、Ⅱと4セクションもあり、かなりヘビーな内容だと思う。
そのうち、最後の午後Ⅱについては、「実務経験」に基づき特定のテーマに対し回答する内容である。
以下のページから過去問も閲覧が可能である。

https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/ps6vr70000010d6y-att/2023r05h_st_pm2_qs.pdf

 問題には「あなたがどのような立場・役割で関わったか」という設問内に制約事項が設けられている。しかし、実際のところ、過去の経験を証明する必要はなく、言い方は悪いが「経験を捏造」することもできてしまう状態なのである。

 問題の構成上、自身で過去の案件の概要を記載した上で、その案件に対してどのように対応し課題をクリアしたかという「起承転結」自体を自身で書けてしまうことが、それを引き起こしているのであろう。その結果、経験を問う試験なのに、そうじゃない人も合格できてしまう余地がある、ところに試験としての破綻を感じてしまう。

 ちなみに、中小企業診断士の試験は実務経験が無くても経営コンサルを行う上での「素養」を測るための試験である。一方ITストラテジストは、「経験」を測る試験でなければならないと個人的には思っている。

 よく、ITコンサルタントに関し聞く悪評として、上流だけ担うだけで最終的な運用まで責任を持たない輩が多いため、最終的には顧客が不幸になるケースが多々発生している。これは、事業者側の戦略的な面もあるが、能力のないコンサルが台頭しているということも一因としてあると思う。それが、日本経済の足を引っ張っているという見方もできるかもしれない。

 つまるところ、「ちゃんと使えるITコンサルタントを輩出しましょう」、ということに尽きる。
経験を問うているならちゃんと経験を持っていることを試験で評価してほしい。それだけ。
ちなみにその方が、ストラテジストの「権威性」「希少性」も高まる(「影響力の武器」的視点)。

ITストラテジストの改善案

 では、どうしたらよいか。

 「面接を取り入れる

それだけでいいんじゃないかと思う。
当然、面接官は民間から「経験」を持っている人を採用する必要はある。
面接だと会話の中で、深く突っ込むことになるので、そうするとさすがに回答者は詐欺師でもない限り捏造した回答は難しくなるはずなので。
 
 面接が難しいのであれば、抽象的な回答を許可するような問題ではなく、もっと具体的な事例と設問を出し、突っ込んだ質問をすることができればそれでもよい。

最後に

 ITストラテジストが取得できたら胸を張ってCIO/CTOとしての役割が担えるようになるのか、ということ。現在のIT系の最上位に位置づけられる資格でもあるため、高みを目指せる資格であるべきだ。
それには、稀有な、それこそ「権威性」「希少性」をさらに高めるようなスキームとして設定してもらいたい。

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onda.masashi@gmail.com

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