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基金とは

 中小企業への補助金は我々の税金が国の基金としてプールされ、それが切り崩されて各所に配賦される構造となっている。

 なお、基金とは以下のものである。

 政府の予算は、1年ごとにつくり年度内に使い切るという「単年度主義」の原則があるが、それだと将来にわたる長期的視点に立った投資はしにくい。そのため、特定の事業に対して複数年度にわたってためておき、必要な時に使うことができるお金、それが基金である。

なお、22年度末の基金全体の残高は約16兆6,000億円にまで達しているとのことだ。

基金の問題

 基金は国から予算が投じられた後は国会のチェックが行き届きにくく、必要以上にため込まれることもあり「埋蔵金」「たんす預金」などと批判される場合もある。特に、この財源は税金であるため、当然必要な分だけ基金で保持することや、適切に使用されることが求められる。いや、義務である。

 そして、以前から「休眠基金」が多数存在する問題が指摘されてきている。それにより、「本来必要なところにタイムリーに資金が回らない」などといったことや、「事務局の維持のために余計なコストが発生する」ことも指摘されている。

 また、成果目標が設定されていない基金も多くあり、今後は全ての基金に成果を検証できる目標を設けさせることを課題として提起されている。これについては、以前の記事でも私も懸念していた(半導体投資がそうだとは言っていない)。

経産省による見直しの実施

 4/22付で以下の発表がされている。

「経済産業省において基金の総点検・見直しを行いました」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2024/04/20240422004/20240422004.html

 それによると以下の対応がなされた模様である。

  • 足下の執行状況や事業見込み等の精査を踏まえた国庫返納
  • 支出が管理費のみとなっている基金の廃止
  • 補助金の基準策定や審査といった根幹業務の在り方についての規律強化

 国庫返納は1,100億円がR6年度中に行われるようである。
全体が16兆6,000億であることと比較すると少ないと思ってしまうのは私だけだろうか。

そして、このように政府が改善をしているというポーズを取ることで「やっている感」を出しているのでは、という穿った見方もしてしまう。管理コストにしたって、基金を運営する独立行政法人や国立研究開発法人がどのようにお金を使っているのか、そこまでは良く見えない。

基金にはどんなものがあるのか

 最新の基金の一覧が下記である。

「令和5年基金シートの公表(点検・見直し後)(令和6年4月22日)」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/information_2/publicoffer/r2023fykikin.html

これを見るといろいろな基金があることがわかる。
中小企業士にとってなじみのものづくり補助金や事業再構築補助金の原資を持つ基金は以下である。
なお、添えたリンクには詳細な内容が記載されているので、時間があれば見てみるのも面白い。

ものづくり:「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援事業基金」
https://www.meti.go.jp/information_2/downloadfiles/2023ks16.xlsx

事業再構築:「中小企業等事業再構築促進基金」
https://www.meti.go.jp/information_2/downloadfiles/r2023ks28.xlsx

また、最近話題になっている、半導体製造に関する補助金や、データセンターに対する補助金は「国内投資促進基金」「特定半導体基金」などから出ているのであろうか。もしくは、単年の予算として基金とは別に確保されているのか(もしわかる方がいれば教えてほしい)。

最後に

 中小企業診断士は、どちらかというとこれら基金に基づき交付される補助金をどう企業に届けるかということを行う。しかし、そこからもう少し視野を広げることで、いま国や世界で何が求められているのかや、国の財源をどこに配分しようとしているのか(ポートフォリオ戦略)が見えてくる。

 一方で、今回のようにきちんと財源が運用されているのかという、政治面での問題・課題といったところも見えてくる。そういった視点は常に意識していきたい。

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onda.masashi@gmail.com

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