タグ:

160円台への突入

 29日未明、とうとう1ドル=160円台を突破した。
一旦利確などで値を戻したがこの傾向はまだしばらく続くのだろうか。
円安というよりはドルが強くドル高といった方が適切なようだ。
米国の景気を支えているのが、消費の高さである。米国のIT関連のハイテク株を中心に業績が良く、それに伴い富裕層が投資を高め資産を増やしており、消費をけん引している形であるという。

投資への意識

 経済の話になるが、投資などを行うことで金利分が上乗せされ徐々に額面上の金額が増える(信用創造という)。これにより、日銀が市場に流通させた金額よりも市場に流通している金額が増える。この日銀が流通した金額をマネタリーベースというのに対し、市場に流通している金額はマネーストックという。そして、マネーストックは、信用乗数×マネタリーベースという式で表せる。

 この信用乗数が高まればマネーストックが増える。信用乗数を高めるには、お金を寝かせるのではなく動かさないとならない。つまり、投資などによる手段がその例である。マネーストックが増えると何が良いのか。マネーストックとは、市場に供給された貨幣の量である。それが増えると、一般的に物価が上昇して景気が上向く傾向となる。その結果、企業利益は上がり、賃金が増え、消費が拡大する。つまりGDPが上昇する。

 この良い例が米国である。高いインフレが続いており、底堅い。
そのため、FOMCによる利下げの見通しが消極的になることで、日米の金利差が縮まらないとのことで、円安がさらに加速する。

投資への意識の違い

 信用乗数の話に戻るが、米国はこの投資に対する意識が高く、国民の51%が投資を行っているとのアンケート結果がある。それに対し、日本は15%程度であるという。それについては、いろいろな理由が考えられるが、以下が主な要因と思われる。

 ・これまでデフレ時代(低金利)が長く染みついており、マインドシフトができていない
 ・日本人の気質として、投資に対する悪いイメージ(不労所得は良くない)がある
 ・周囲に投資を行う人の絶対数が少なく、勉強する機会も少ない


このあたりの改革は一朝一夕では難しいが、国としてもNISAの適用枠や期間を見直すことでそれを変えようという施策がとられ始めている。

自国を安売りしている意識

 円安ということは、日本をスーパーに例えた場合、
 日本のすべての商品がバーゲンセールされているということである。

 安いからインバウンドが増えるし、輸出をすれば車も買ってもらえる。
これって日本自体が強くなったわけではなく、外部要因による結果でしかない。
そこに一喜一憂するのは本質的ではないと思う。

 日本自体が新製品開発や新市場開拓し本質的に強くなることに注視すべきだと思う。

 確かに日本内では、大手の輸出中心企業が恩恵を受けて、中小などは輸入中心であるため苦境にたたされている。その上、国としての賃上げ圧力によりしぶしぶ賃上げせざるを得ない状況ではある。そういった特性による影響は国がフォローすべきであると思うが、本質的にはそこではなくどこで戦うのかということかと思う。

国としてのペネトレーション戦略

 上でも述べた通り、現在は安売りにより海外からの需要が高まっている形である。

 今後日本が回復するシナリオとして何が考えられるのか。
過去にも自国安を経験することで、その後の経済に好影響を与えることが過去にも多く起こっているという。自国安の際にいかに顧客を創出し、それをその後も継続的に固定客化するかということである。

ここのヒントとなるのが、ペネトレーション戦略(価格浸透戦略)である。

ペネトレーション戦略とは、企業が最初は安売りをすることで市場のシェアを高め、顧客を囲い込みさらに規模の経済や経験曲線によりコストを下げることで、競争優位を作り他社の参入を高めることである。ペネトレーション戦略による出口に至るシナリオは以下の通りだ。

1.利益が出にくい価格設定で提供
2.市場で大きなシェアを獲得する
3.価格の見直しを実施する


つまり、3.の部分の最終的に参入障壁を作り、価格の見直しを行い高単価へシフトする方向である。

成長シナリオ

 では何を具体的にすればよいのか。

日本としての本当の強みは何なのかということである。
企業でも最終的には競合との差別化できる競争優位性が何なのか、その商品は何なのかということに行き着く。つまり他国に勝てるものは何なのか、ということである。今は一時的に円安により注目されているが、そのまま固定客化し単価アップにも耐えられるような市場を構築できるのか。

個人的には以下が可能性として挙げられる。

インバウンド(文化・治安)
インフラ等のシステム
日本の食文化
ものづくり(GX)


 これらは潜在的に優位性を持っていると考えられる。
インバウンドはこれまで知られていなかった日本の良さを伝えられれば可能性は広がるし、日本のインフラや治安のベースとなっているシステム自体も挙げられる。少子高齢化の中でいかに一人当たりの生産性を高めるかやそれを公共の仕組みとしてどう成り立たせるかという視点も国を強くするはずだ。
 それ以外にも日本食の訴求であったり、ものづくりもGXの需要に対しこれまでの日本の製造業の力を結集することでIoTを加速させられれば、覇権獲得の可能性があると考える。国としても半導体であったりペロブスカイト太陽電池など投資を行うことなどを通してそれを後押しすることも求められる。

最後に

 メディアでの取り上げ方でも円安という部分に目が行きがちで、日銀による為替介入なども注目されているが、金利差による影響など通常の市場の流れで発生していることであり、それに着目することは短期的な部分にしか目を向けていないことになる。
 そうではなく、そういった外部要因がなくなった場合にどうやって次につなげていくのかを、きちんと考えていかないとならない。それは、企業でもそうだし国においても同じことが言える。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

投稿者

onda.masashi@gmail.com

関連投稿