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「トラクターの値段がここ最近さらに高くなったな…」そんな思いを抱えている農家の方も多いのではないでしょうか。農機の購入費用は年々上がり、燃料代・肥料代まで高騰する今、経営の”重さ”がじわじわと増しているのが現実です。

でも、実は風向きが変わってきています。国の政策が、農業の「所有から利用へ」というパラダイムシフトを本格的に後押しし始めています。今回は、そのしくみとこれからの設備投資との向き合い方を、一緒に整理してみましょう。

① 日本農業の「今」

まず現状から目を背けずに見ておきましょう。農林水産省の2025農業センサスデータによると、基幹的農業従事者の平均年齢は70歳に迫っています。このペースで高齢化が進めば、2040年頃には現在の生産基盤を維持することすら難しくなるとの指摘があります。

追い打ちをかけるように、ウクライナ情勢や円安の影響で肥料・飼料・燃料の価格が高騰しています。特に経営規模の小さい家族経営農家にとっては、コスト増を価格に転嫁しにくい構造が重くのしかかっています。これは個別農家の問題ではなく、日本農業全体が抱える構造的な危機です。だからこそ、国も本腰を入れて動き始めています。

② 国の方針:「守る」だけじゃなく、「攻める」へ

2025年の総合経済対策では、農業分野に対して「守り」と「攻め」の二本柱が打ち出されました。物価高騰対策(守り)と並んで、農業の構造そのものを変える中長期投資(攻め)が大きく位置づけられています。「攻め」の具体的な柱は3つです。

  • 農地の大区画化(農業農村整備事業:約3,952億円):平均0.3haという狭小な水田を1ha以上に整備し、大型機械が使いやすい農地基盤をつくる
  • 水田の畑地化(水田活用の直接支払交付金:約3,015億円):米需要の減少に対応し、麦・大豆・野菜の生産を拡大して食料自給率を向上
  • スマート農業の社会実装(スマート農業・農業支援サービス事業加速化総合対策事業:156.58億円):農機の「所有から利用へ」を推進するFaaSの普及

特に注目したいのが3つ目。令和12年度(2030年度)までにスマート農業技術の活用割合を50%以上にするという野心的な目標を掲げており、最大5,000万円の機械導入補助など、本気度が読み取れます。

③ FaaSという潮流:農機も「買う時代」から「シェアする時代」へ

FaaSとは「Farming as a Service(農業のサービス化)」の略。ITの世界のSaaS(ソフトウェアのサービス化)と同じ発想です。農機を個人で「所有」するのではなく、農業支援サービス事業体が農機を保有し、農家はそれを「利用」するモデルです。

自動操舵トラクター、ドローン、ロボット田植機といったスマート農機は1台あたり数百万〜数千万円。家族経営農家が個別に購入するのはハードルが高すぎます。しかしFaaS型なら、初期投資ゼロに近い形で最先端技術にアクセスできるようになります。

効果は実証済みです。水稲作での実証試験では、スマート農業技術の活用により労働時間が約49%削減。農繁期(ピーク時)に至っては約61%削減という結果が出ています。「同じ人手で倍の面積を耕作できる」可能性を示す数字であり、担い手不足への直接的な解決策となります。

④ ただし、最大の課題は「需要を平準化できない」こと

ここで現実的な話もしておきましょう。FaaSの普及に向けて、実は構造的な難問があります。それが「需要の平準化ができない」という問題です。

農業は季節産業です。田植えは5〜6月、稲刈りは9〜10月に集中します。これはFaaSを提供する事業体にとって深刻な課題で、「農繁期に依頼が殺到し、農閑期はガラガラ」という需給ミスマッチが生じやすいのです。

サービス提供側は繁忙期に合わせて人員と農機を揃えると、農閑期に固定費だけがかさむ。利用者側は繁忙期に「申し込んでも空きがない」という事態が起こりうる――これは、ITのSaaSとは根本的に異なる農業特有の難しさです。この課題を乗り越えるには、地域ぐるみの作付けスケジュール調整や、複数作物・複数作業への対応による稼働率向上が欠かせません。一農家・一事業者だけでは解決しにくい問題だからこそ、地域連携や行政・JAとの協力体制がカギを握ります。

⑤ 個人農家としての向き合い方と、取れる選択肢

では、実際にどう動けばよいのでしょうか。選択肢は大きく3つあります。

  • ①サービスの利用者になる
    ドローン防除や自動操舵耕起など必要な作業を農業支援サービスに委託し、農機の固定費を変動費に転換する。高齢化が進む中でも営農を続けるための現実的な手段です
  • ②サービスの提供者になる
    農機を保有している・または導入を検討している方は、周辺農家へのサービス提供を事業化する選択肢があります。機械導入費の最大1/2(上限5,000万円)の補助金も活用でき、地域農業を支える新たな収益源にもなります
  • ③地域連携で対応する
    JA・複数農家・行政が一体となってサービスを立ち上げる方法。前述の需要平準化の問題も、地域ぐるみで作付け調整を行えば解決の糸口が見えてきます

どれが合うかは経営規模・年齢・地域の状況によって異なります。「正解」を探すより、「自分の農業の将来像をどう描くか」から逆算して考えることが大切です。

⑥ 私たちにできること――農業法人化から個人農家支援まで

リヴァーヴ・コンサルティングは、こうした農業の転換期において、農家の皆さんの「考える・動く」を一緒に支援しています。

農業法人化は、FaaS型の農業支援サービスを事業化するためにも、補助金申請の主体として動くためにも有効な選択肢です。法人化によって補助金の申請要件が広がるケースも多く、スマート農業への移行をスムーズに進められます。もちろん、個人農家のまま補助制度を活用する方法もあります。

補助金は「知っている人だけが使える」世界です。スマート農業・農業支援サービス事業加速化総合対策事業、スマート農業技術活用促進法に基づく計画認定など、活用できる制度は複数ありますが、要件整理や書類作成は専門的な知識が必要です。「自分に使えるのか?」という入口の疑問から一緒に整理することができます。

「所有から利用へ」という大きな流れは、大規模農家・家族農家を問わず、すべての農家に向けられたシグナルです。DXや生産性向上という文脈でも、農業はいま最も変革の余地がある分野の一つ。この転換期に、受け身ではなく主体的に動くための伴走者として、いつでもお声がけください。

経営の転換期こそ、一人で抱え込まずに相談することが大切です。ご相談も歓迎いたします。お気軽にお問い合わせください。

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onda.masashi@gmail.com

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