大手の好業績と中小企業の明暗
決算発表
大手の決算発表が行われた。
トヨタ自動車は5兆円の営業利益を上げ過去最高を記録し、ホンダや日産などの他の自動車勢も、みな最高益を記録した。TSMCで3兆円、テスラでも1.3兆円ほどなので、相当利益を上げたことになる。この要因は、米国を中心にEVの踊り場(キャズムという)によるハイブリッド車需要の高まりもあるが、円安による輸出の好調も大きく影響している。このような傾向は、大手など輸出割合の高い企業は大きく恩恵を受け、それ以外の輸入や内需中心の中小企業などはその陰に隠れて苦しんでいる。
大手の今後の戦略
トヨタなどは、今回の利益である内部留保を、今後は人への投資やダイハツなど不正を受け内部の品質プロセスの改善や、EV基盤の整備、自社株買い(いわゆる金庫株)により、株価アップによる株主還元や、ストックオプションによる社員への還元などに充てられるという。そして、その中には中小企業などの下請けへの値増し分として3,000億円も見込んでいるという。
※なお、それに対し、日本商工会の会長からは、大企業の責務として儲けが出たから翌期に還元するのではなく、あらかじめ当期にコストとして計画に見込んでおくべきだ、とのコメントがニュースに出ていた。それはそれでもっともである。
円安の影響
現在の円安はしばらく構造的に続くであろう、とうことは以前の記事でも述べた。
今後も円高に振れたとしても130円台、140円台に推移するだろう。
円安が悪い点としては、冒頭でも述べた通り「輸出中心の大手と輸出を行わない中小企業などとの収益の格差が広がる」ことである。過度な円安により、2極化を生み、約7割を占める中小企業労働者への生活水準悪化をもたらす。
したがって、企業は輸入コスト増加によるコストを販売価格に転嫁し、利益悪化を防がないと存続が難しくなる。
そして、上昇した物価への対応として、従業員への賃金アップといった形であとから対応する必要も出てくる。
こうした過度な変化への対処が必要であり、それを妨げる要因を排除することが重要である。
したがって、下請けの価格転嫁を加速させるべく、政府にて主導していただくか大手が率先していかないとならないと思う。
国の円安への対応
過度な円安を防ぐため、政府日銀も円高方向にもっていくはずである。
そのためには、政策金利を徐々に上げていくことになる。
日銀の分析では、実質金利を上げても企業や家計への投資や消費は実際は抑制されない、という。
過去の黒田総裁時代のマイナス金利政策は、円高から円安に向け当時は大企業の声が強かったわけだが、現在はその逆であり大企業の恩恵は十分得られている状態であり、今後は世の中の風潮として金利上昇圧力が今後高まると思われる。
金利上昇の影響
一方で、上記の通り今後金利が上がると、中小企業など借入に頼る企業や今後投資を行っていく企業にとってはブレーキになる。場合により、倒産などにつながる恐れもある。
これまでの大企業中心とした円安による恩恵を中小へ還元する動きが必要である。補助金という手もあるが、経済全体としては中小の価格転嫁を高めることである。この部分を政府としては徹底的に支援してもらいたい。
日産の下請け叩きを受けて
3月には日産が下請け企業に対し恒常的に受注価格を抑えるように圧力をかけていた問題が発覚した。
自分たちの利益が出ているときは良いが、そうでないときは自分たちが最優先という考え方から来ている体質である。他の自動車関連やそれ以外の業界でも同様の風潮があるだろう。
現場主導で行われていれば、社内の利益重視の体質から来ている側面もあるし、経営自体からの指示であれば(そんなことはないと思うが予測できなかったとしても)それは1企業人として失格である。サラリーマン社長などにもこうした傾向は多いかもしれない。
実務補習での反省

実は上記の日産の報道がでる少し前の2月に日産のTier 1企業の1つを企業診断しており、その矢先であった。
その診断は実務補習のうちの1社であったのだが、経営状況はコロナ禍での工場閉鎖や半導体不足による不稼働により、3期連続で赤字が続いていた。
そのような企業に対して我々が提示した最終的な報告書の提言内容は、以下2点であった。
1.原価率の低減
2.新市場開拓(自動車以外の販路の開拓)
最終日の社長への報告の際に言われた言葉として以下があった。
「取引先への価格交渉についての提案もして欲しかった」
私としては、ある意味大手顧客との関係性上難しいと判断してしまっていたわけだが、今回のニュースでもある通り広い視点で考える必要があったと改めて思った次第である。顧客の経営状況や、経済の流れを踏まえて考えると何らかもう少し踏み込んで考えることができたのではないか、と。
今後も身近でこのような問題に直面している企業を支援する機会があると思う。
政府からも価格交渉に関するガイドラインも出ているが、それに向けたノウハウも改めて整理しようと思う。
以上
投稿者
onda.masashi@gmail.com