最近は日産による「下請けいじめ」に対する世間の目が集まっており、メディアでも大きく取り上げられている。今回の概要は、3月に公正取引委員会から改善指示が出されたあとも継続して下請けへの不当な減額要請等が続いていた、ということが発覚したためである。そのため、日産としての社会的責任が問われているという状況である。

問題視されるべき理由

 ここまで大きく取り上げられるべき理由として、現在の円安による対応と逆行しているためである。中小企業を中心とした下請け企業は資材価格高騰で大きく収益をさげている。そのような中、下請け企業は販売価格を値上げすることで収益低下を防ぎ存続しないとならない。そして、従業員への賃上げを行うための原資を確保しなければならない。
 
 中小企業に務める人口は国民の7割を占める。つまり、これら世帯が賃上げにより家計の購買力を維持しないとGDPがさらに冷え込むことになる。そして、国として持続的なインフレ2%も達成できないことになる。
 大手が輸出で儲けた利益を正当にそのサプライヤーである下請け企業へ還元するのは責務である。それを行わず、大手のみ従業員やその役員の私腹を肥やす形で独占することはあってはならない。

価格転嫁に満足している企業は3.9%

 では、実際に下請けの要請に対し価格転嫁がどの程度行われているのだろうか。
以下は2月時点の自動車業界の調査結果であるが、満額で値上げに応じてくれたと認識している下請け企業は全体の3.9%だけである。5割以上値上げを実現できた企業でも約4割である。
 日産は度を越してしまったわけだが、自動車業界全体として下請けに価格低下を強いる傾向は業界全体にはびこっていることがここからわかる。

(引用)「「自動車業界」サプライチェーン動向調査」(帝国データバンク)


 また、下請けといっても1次受けから5次受けなど、多重下請け構造となっており、下層に行くにしたがってこの比率はさらに下がる。末端の企業ではさらにそれが難しい状況であり、業界構造が下記の通りピラミッド構造になっていることを考えると、苦しい思いをしている企業が多くを占めていることになる。

(引用)「多重下請け構造であえいでいるエンジニアが知っておきたいIT業界の仕組み」(@IT)


日産だけの問題なのか

 以前にも記事にしたが、日産の今回の問題は以下の点から来ている。

・資本主義による弊害
・経営層の怠慢
・短期利益志向による評価制度の弊害


 特に今回の行動は、1企業担当者という視点で見るとわからなくもない面はある。というのは、日産経営としてもようやく利益を出せる状況になってきたわけであり、同業他社であるトヨタやホンダにも追い付きたいという思いもあるだろう。また、現場の調達担当者としても、コストカットがいわば仕事であり評価されるうえでのKPIにもなっているはずであり、がんばって業務を遂行した結果という言い分であろう。

よって、ある意味、普通の経営者と従業員が業務を行えば、必然的に起きる問題である。

 日産自体も悪意を持って行っているとも思えないし、若干袋叩きにあっているところを見ると同情もする。しかし、日本全体を考えた場合、これを考える機会としてとても意義があることでもあり、日産だけに限った話ではなく業界全体への改善の契機につながることが望ましい。

ガバナンスを高めることしか方法は無いのか

 公正取引委員会など含め、日産の行動が「違法かどうか」という視点で検討されているが、それははっきり言ってどうでもよい。問題はどうやってこれを改善するかだ。

改善に対する意見が出されているが、基本的な方向性は社内に監査委員会を設置しガバナンスを高めることで目を光らせ抑止・防止するという形である。

私個人としては1企業内にそれを委ねるというのは、難しいのではないかと考える。
必ず担当者間での忖度は発生するし、100%は防止できない。また、各企業単位で是正をすることでこれに対する改善コストが発生する訳であり、生産性の低下も発生することになる。

したがって、一番はそうならないような仕組化をすることである。

資本主義による制約

 一番の方法は、サプライチェーンの上流から下流の末端の下請けまで含めた収益の考え方である。ある意味、これら日産から5次受けまでを含め運命共同体でもあるため、末端までの企業を含めたトータルでの収益を考えるべきである。つまり、1企業内の利益で採算を管理している限りこの問題は解消しない。

それには資本主義の考え方、企業統治の考え方へのアンチテーゼでもあるため、簡単に言うべき話ではないが、もはや既成概念に囚われる必要はないだろう。そしてそれを主導するのは、1企業というよりは政府主導でハード面から考える必要がある。

 また、ハード面には時間がかかると思われるためそれ以外の方法も考える必要がある。
その方法としては、経営者や従業員へ啓蒙することである。国目線での広い視野を持たせるような教育を行うことで、大手企業に対しリテラシー向上をプログラム化するような方法である。

 ある意味、今回の経営者や従業員はそういった視点が足りていなかったわけである。自身の行動がどういった効果につながるのかを把握させることで、責任意識を持つことにつながる。まさに今回の事象は、日本の硬直した企業風土から来ている側面でもあるような気がした。残念ながら、下記記事に示した「日本の経営」をまさに体現しているのではないか。


多重下請けによる中抜きもここで改善すべき

多重下請け構造による中抜き問題は散々私も取り上げてきた。

 IT業界程かどうかは分からないが、自動車業界やそれ以外の業界でも多重下請けによる中抜きは多いと推測する。改めて言うが、中抜きにより中間マージンを搾取している業者は付加価値を生み出しておらず、生産性を下げる要因である。

それを改善するだけで、実は日本のGDPはかなり改善するのではないかと思っている。
今回の件で、多重下請け自体を無くすことが、価格転嫁率を高めるという話にもつながることが言える。つまり、今回の問題とあわせてこの問題も指摘することで、抜本的な改善を期待したい。

以上

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

投稿者

onda.masashi@gmail.com

関連投稿