「補助金って、うちみたいな家族農業でも本当に採択されるのだろうか…」そんな不安を抱えながら申請に踏み出せずにいる農業経営者の方も多いのではないでしょうか。

このたび、リヴァーヴ・コンサルティングがご支援した省力化投資補助金(一般型)第4回公募において、支援した3件がすべて採択されました。当社の農家支援の採択実績は、2026年3月現在で累計7件となっています。本記事では採択された3農場のストーリーと、採択につながった計画上のポイント、そして第6回公募(2026年3月上旬受付開始・5月中旬締切予定)に向けた情報をお届けします。

採択事例①:豆類収穫の「2工程→1工程」で年間約27%削減する計画

北海道十勝地方に57ha(東京ドーム約12個分)の圃場を持つ畑作農家。小豆・金時・大豆を主軸に、年間約7,500万円を売り上げる規模です。最大の課題は、豆類の品種ごとに最適収穫方式が異なることでした。従来は全品種に「ビーンカッターによる刈り倒し+ピックアップ収穫」という2段階作業を実施しており、繁忙期の作業負荷が深刻でした。

そこで設計したのが、ピックアップ方式と一括収穫方式(ロークロップ型)を1台で切り替えできる汎用コンバインと、GNSSガイダンスシステムの組み合わせ。大豆を一括収穫方式へ変更することで収穫工程を約27%削減し、1日あたり2.1時間の省力化を実現する計画です。さらに作業履歴データをZ-GIS(JA全農が提供するクラウド型営農管理システム)で一元管理することで、複数人での作業指示ロスも解消。余剰リソースは2.5haの農地拡大と独自販路開拓に充当します。投資回収期間は1.25年という費用対効果の高さが評価されました。

採択事例②:GPS×多機能カルチで除草工程を54%削減する計画

同じく北海道十勝地方に約39haの圃場を持つ畑作農家。大豆・小豆・甜菜(てんさい)・馬鈴薯を生産し、年間約4,000万円規模で経営されています。家族3名で圃場を管理する中、除草・防除工程のトラクター作業回数の多さが人手不足に輪をかける課題でした。加えて圃場が山間に点在し、アクセスに時間を要するという固有の悩みも抱えていました。

解決策として選んだのが、GPS自動操舵機能付き大型トラクター(123馬力・4WD)と、従来は個別に実施していた中耕・除草・深耕・培土を1回走行で一括実施できる多機能カルチベーターの組み合わせです。大豆・小豆・甜菜のトラクター作業回数が12回から6回へ約50%削減。精密除草の実現により除草剤の散布回数も半減し、年間作業工数54%削減・1日4.3時間の省力化を計画。燃料費の約4%削減という副次効果も加わり、余剰リソースは5haの農地拡大へ充当します。

採択事例③:リール型コンバイン×GPSで倒伏作物の収穫ロスを解消する計画

北海道十勝地方に51haの圃場を保有し、小麦・小豆・金時豆・馬鈴薯等を生産する畑作農家。年間約6,000万円規模の経営です。この農場の固有の悩みは、防風林のない圃場が多く豆類の倒伏(作物が風で倒れること)が他農場より頻繁に発生することでした。小豆では年間約30%、金時では約15%の面積で倒伏が生じており、従来のロークロップ型コンバインでは逐次停車して手作業で作物を起こす非常に非効率な作業が常態化していました。

解決策はリール型コンバインとGPSガイダンスシステムの組み合わせ。リール型は倒伏した作物も下からすくい上げながら刈り取れるため、停車・手作業が一切不要になります。収穫工程の作業工数を約34%削減、1日あたり2.8時間の省力化を実現。さらにGNSSにより重複走行や刈り残しの防止も図り、燃料費削減にも貢献します。余剰リソースは4.5haの農地拡大と直売所を活かした独自販路開拓へ活用する計画で、投資回収期間は1.54年の事業計画が評価されました。

採択につながった3つの計画ポイント

3農場に共通する、採択を高めるための戦略を整理します。

  • ①オーダーメイド性の徹底的な設計と論証
    省力化投資補助金(一般型)の最大の特徴は、既製品の単なる購入ではなく「複数の機器・システムを組み合わせて自農場固有の課題を解決するオーダーメイド設計」ができる点です。コンバイン+専用ヘッド+GNSSガイダンス、トラクター+GPS+多機能カルチなど、なぜその組み合わせがこの農場に必要かを現状課題から論理的に展開することが審査を通過する上で重要です。
  • ②生産性向上の一貫したロジックと財務の整合性
    省力化時間(〇時間削減)→余剰リソースの活用先(農地拡大・販路開拓)→付加価値額の増加という流れを財務計画と整合させ、「投資回収期間3年以内」という説得力ある数値で示しました。3農場すべてで1.25〜2.67年での回収見込みを提示できており、審査員が「確かに高い効果がある」と判断できる根拠の組み立てが重要です。
  • ③賃上げ要件への丁寧な対応
    第5回以降は1人当たり給与支給総額を年率3.5%以上引き上げることが必須要件(物価安定目標+1.5%という設計)となりました。家族経営が多い農業では、農業所得の向上が賃上げにどう連動するかを財務計画と紐づけ、根拠を持って論証することが採否の重要な分かれ目になります。

まとめ:テクノロジーが担い手不足の日本農業を守る力強い一手

農業白書2024などによれば、基幹的農業従事者の平均年齢は2024年時点で69.2歳であり、依然として高齢化が進行しているとされます。​
基幹的農業従事者数(個人経営体)は、2000年の約240万人から2024年には111万4千人へと約20年間で半減し、2025年農林業センサス(概数値)では約102万人までさらに減少しています。

日本の食料自給率は、直近公表値でもカロリーベースでおおむね38%前後と低水準で推移しており、同じ時期の諸外国のカロリーベース食料自給率がカナダ233%、アメリカ121%とされるのと比較すると、依然として最低水準に位置しています。

この構造的課題に立ち向かう力が、スマート農業による生産性向上とAI活用にあります。

今回ご紹介した3農場は、いずれも補助金を活用したスマート農業DXを通じて、農地拡大・販路開拓・賃上げという好循環を設計しました。人が減っても農地を守れる。少ない人手でより多くの収穫が得られる。テクノロジーは農業従事者の体力的な限界を補い、次世代に農業を引き継ぐ頼もしい味方です。

第6回公募がいよいよ開始 — 農業DXの第一歩として

省力化投資補助金(一般型)第6回の受付が2026年3月上旬より開始されます(締切は5月中旬予定)。補助率は最大2/3(小規模事業者等)、補助上限は最大8,000万円。たとえば1,000万円の設備投資なら約667万円が補助される計算です。

「うちは申請対象になる?」「どんな設備が使える?」「書類はどう書けばいい?」——どんな小さな疑問でも、まずはお気軽にご相談ください。リヴァーヴ・コンサルティングは中小企業診断士の視点から、経営者における事業計画の立案・申請書類作成・口頭審査の準備まで、農業経営者に寄り添った伴走支援を行っています。スマート農業の視点から省力化の根拠を丁寧に整理し、審査員に伝わる計画書を一緒に作り上げます。農業経営の改善とDX推進に向けて、少しでもお役に立てれば幸いです。

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