少し時間がたってしまったが、6月21日に公開された経産省の「価格交渉促進⽉間(2024年3⽉)フォローアップ調査結果」について見ていきたい。当該調査結果は、定期的に中小企業を中心とした「価格交渉」と「価格転嫁」の状況をまとめたものである。

■価格交渉促進⽉間(2024年3⽉)フォローアップ調査結果:
https://www.meti.go.jp/press/2024/06/20240621002/20240621002-ar.pdf

価格交渉したいができていない企業は約10%

昨年2023年9月の調査結果に対し、2024年3月時点での評価を対比する形でまとめられている。

(引用)「価格交渉促進⽉間(2024年3⽉)フォローアップ調査結果」(経済産業省)

 上記は「下請け企業が発注企業と価格交渉を行うことができたか」を表している。
「価格交渉が行えた」企業は59.4%で昨年9月の58.5%から微増となっている。
一方、「価格交渉を行いたいが行えなかった」企業は10.3%であり、昨年の7.8%から増加する結果となっている。

 また、「コストは上昇したが価格交渉は不要」という企業も16.2%存在している。
これは交渉なしで価格転嫁が行われたのか、下請け企業が忖度して敢えて交渉しないと判断したのか、コスト上昇分を何らかで克服した企業が含まれていると判断できるが、内訳までは分からなかった。

 いずれにしろ、ここから見える点として、「交渉したいが交渉できなかった企業」はピンクと赤色の約10%ということになり、残り90%は「価格交渉できている or 不要」ということになる。
個人的には価格交渉ができていない企業はもっと多いと思っていたが意外にも少ないという印象を持った。

価格へ転嫁できた割合は約45%程度

以下は、価格転嫁がどの程度行われたかを表した結果である。

(引用)「価格交渉促進⽉間(2024年3⽉)フォローアップ調査結果」(経済産業省)

 下請けのコスト増加分に対し、発注企業に対し価格転嫁できた割合は46.1%という結果である。
昨年9月の45.7%から微増となっている。

価格転嫁は発注企業の責務

 上記の結果の46.1%についてどう評価するかである。
発注企業には大企業のように輸出による円安の恩恵を受けている企業もあれば、国内需要のみに依存している大手発注企業も存在する。したがって、後者の企業のような価格転嫁が難しい企業も含まれた数値であることは考慮する必要はある。

 それを前提で言うが、それでも『「46.1%」という数字は低い』ということは言っておきたい。
国全体として7割を占める中小企業の従業者において、転嫁率を高めることが賃上げにつながり、国内消費の喚起からGDP向上につながるためである。
そういった意味で、基本的には転嫁率は100%を目指すべきである。

つまり、SCMの上流から下流まで通して本来的にはシームレスにつながることが理想である。

転嫁率が特に低い業種(金融・保険、放送、トラック輸送)

以下は、価格交渉と価格転嫁状況を業種ごとに整理したものである。

(引用)「価格交渉促進⽉間(2024年3⽉)フォローアップ調査結果」(経済産業省)

 業種ごとに価格転嫁率には差がある。
40%を切っているのは、廃棄物処理、金融・保険、放送コンテンツ、トラック輸送などである。
トラック輸送については、2024年問題で残業規制が話題になっているが、価格転嫁率は特に低く28.1%である。
これはある意味業界特有の構造であろうか。
IT業界もそうだが、特に建設や輸送業界は多重下請け構造の傾向が強いため、そのあたりも関係しているのであろう。

抜本的な対応として何が良いのか

以下は経産省として、価格転嫁率を向上するための施策である。

(引用)「価格交渉促進⽉間(2024年3⽉)フォローアップ調査結果」(経済産業省)

 経産省として対策として掲げられた施策であるが、この1ページに記載した内容しか当該調査結果資料には言及がない。これはこれで進めていただく必要があるが、個人的にはこれだけしか施策の記載がないのは何とも寂しいものであると感じてしまった。少なくとも、もう少し各内容について掘り下げた内容の言及があってしかるべきでないかと思う(別の資料で詳細があればどなたか共有いただきたく。。)

価格転嫁に向けて必要なこと

1.発注企業としての自覚を促す

 価格転嫁に向けて発注企業として、自社だけの問題ではないということをきちんと自覚する必要がある。
国として、発注者としてあるべき心構えを浸透させる必要がある。
資本主義として自社の利益を優先する思想は担保する必要はあるが、国として国際人として法人および経営者として置かれている状況と、望まれる心構えを浸透させる必要があると思う。そこは国がリーダーシップを取ってもらう必要がある。

2.第三の賃上げなどの促進

 最終的には中小の価格転嫁から従業員への賃上げという形で還元することで、GDP向上することへつながる。
その為の施策として「第三の賃上げ」という選択肢もある。
簡単に言うと、企業が福利厚生の充実や社宅などで家賃を補助することで、従業員の費用を天引きすることで可処分所得を減らし税金徴収額を減らすことを指す。可処分所得が減ることで、税金が減り賃上げと同じような効果を狙ったものである。
 現在は家賃は社宅などしか認められていないが、中小企業に対しては社宅以外の場合でも一定金額までは認めるという施策は考えても良いかもしれない。中小に対して現在の仕組みを緩和することで、中小企業に対する支援を手厚くするというのは、昨今の円安による大企業との格差を是正するという意味で有用ではないか。

まとめ

 価格交渉とその先の価格転嫁に対する状況と国として考えている施策について共有した。
以前から申し上げているとおり、抜本的な対応が必要であることは見て取れる。
国としてのイノベーションが必要という見方もできる。一方、一診断士として本件に対しプレゼンスを高めていくという部分で貢献していく必要があると認識している。中小企業診断士としてのプレゼンス向上という話は常について回るため、向上に向けて考えていきたい。

以上

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