先日公開された中小企業白書2024(全文)に対し気になる内容について触れたい。
前回のその①(下記)は支援機関の状況について記載したが、今回は生産性に関する内容について取り上げる。

 

生産性の現状

 下記は、OECE加盟国の中での日本の労働生産性の順位である。

(引用)「中小企業白書2024」(中小企業庁)

 見ていただくとわかる通り、日本の生産性は32位とかなり下位に位置している。
ちなみに「購買力平価換算」と注記されているが、これは簡単に言うと為替レートによる差異を吸収した形で評価したということを表している。現在円安状況にあるが、そういった影響は除外した上で公平に評価した状態での結果ともいえる。

では、そもそも生産性とは何なのか。次に説明する。

生産性の算出

 生産性は簡易的には以下の式で表される。

 営業利益は収益にあたる値なので、それを高めることは付加価値につながるという部分はわかりやすいと思うが、ここには人件費や減価償却費といった費用も計算式に含まれる。

 人件費は、従業員に対して支払われる給与、賃金、ボーナス、および福利厚生費用などの総額であるが、付加価値の源泉は労働力である人的資本の投入によりもたらされるという点から来ている。また、減価償却費は、投資した資産を会計上で費用として計上した値であるが、投資による資産の利用価値を高めることでイノベーションや効率性を高め付加価値を生み出すためである。

 なお、「営業利益 + 人件費 + 減価償却費」は付加価値額とも呼ばれる。それを従業員数で割ることで、労働生産性は一人当たりの付加価値額といういい方もできる。

GDP成長率との関係

 以下は、海外のGDP成長率に対する日本の生産性の関係である。

(引用)「中小企業白書2024」(中小企業庁)

 先日日本の実質のGDP成長率がマイナスとなったことがニュースで取り上げられた。
上記は名目であるが、国際的に見た場合、日本は置いて行かれている状況である。
この図が表しているのは、「欧米並みの一人当たり名目GDP成長(+1.9%成長)を実現するには、生産性を+2.1%向上する必要がある」とのことである。なお、日本の労働力人口が減ってくるということも加味した数字である。

 生産性の向上については、これまでも何回か取り上げてきているが、IT化やDX化による対応が欠かせない。特に生産性は中小企業よりも大企業が高い傾向があり、約7割の労働人口を占める中小企業の生産性を高めることが重要になってくる。以下の青とオレンジのバーが中小企業を示している。

(引用)「中小企業白書2024」(中小企業庁)

  

外国人労働力の活用

 次に、労働人口の減少にともない期待されるのは外国人労働力の活用である。海外からの労働力を確保することで国内の労働供給を補い、生産性の向上とあわせてGDPの維持向上を図る必要がある。
以下は、今後2070年にかけて増えるであろう外国人人口の推移であるが、3.1%から14.9%へ増加がみこまれる。

(引用)「中小企業白書2024」(中小企業庁)

  

外国人労働力の長期的な確保に向けて

 以前、下記でも触れたが外国人労働力については、極力長期的な滞在を目指す形が望ましい。

1.無期限の労働ビザの取得増加

 現在の就労ビザごとの外国人労働者の割合である。

(引用)「中小企業白書2024」(中小企業庁)

 これを見ると最近は「専門的・技術的分野」のビザ取得の割合が伸びてきている。基本的には長期滞在が可能なビザになるので、そういった意味で長期滞在者が増えてきている傾向に見て取れる。

 また、一番下の赤色の「技能実習」については、現在政府が検討を進めている「育成就労」制度に変わろうとしている。そこでも、これまでの1年の短期ではなく長期滞在をベースとしており、特定技能1号の取得をスムーズに行えるようなスキームとなる模様だ。

2. 外国人労働者の賃金向上

 次に外国人労働者の賃金状況は以下である。

 現在の円安基調により、外国人労働者は日本への渡航を採用する優先度は下がっているはずである。

それに対し、日本人と同等の水準の賃金体系とすることがこれから求められると想像される。特に日本国内での賃上げの話が盛り上がっているので、それに遅れずこちらも同じ優先順位で手当てが進められるべきである。

最後に

 以上、今回の白書の中から労働生産性の状況把握とGDPとの関係について確認した。
また、GDP向上という意味で日本の労働力人口を補う上で外国人労働力についてフォーカスして取り上げた。

こうした形で、各々の課題はさまざまに関連し合っている。
例えば、円安の話を見た場合でも、GDPを押し上げるインバウンドの収支は伸びるが、一方で日本への長期滞在という意味だとマイナスに作用するなど両面の話を含んでいたりする。今回の白書を見ると、いろいろな視点で状況と今後の方向性が書かれており、そういった知識を前提知識としてインプットしておくことは、多面的に判断することにつながると改めて認識した。

以上

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