日本の生産性はOECDの各国とも比較しかなり低い。
これまでも何回か取り上げてきたが、今回日本生産性本部の記事も含めさらに深掘りしようと思う。

日本生産性本部による報告

日本人は能力は高いが「付加価値創出力」が低い

 日本生産性本部による日本の生産性の低さについて、下記記事が出ている。

 ■日本の生産性が低い要因は「付加価値創出力」と「人材育成力」
  https://ascii.jp/elem/000/004/198/4198878/
  ※ASCII.jp × ビジネス

 以下図では、いくつかの要素に分解して要因を見た場合、「IT・デジタル化」「教育・人材」「イノベーション」の分野でサブカテゴリーである『付加価値創出力』が特に低いことが提起されている。
たとえば、教育・人材では学校教育成績は高いが、そこから価値の創出につなげられていないということだ。

(引用)「日本の生産性が低い要因は「付加価値創出力」と「人材育成力」」(ASCII.jp × ビジネス)

 

原因は、非正規化が進み人材教育の不足

 ここから推測される点として、人材育成(人的資本投資)への投資が不足しているのではないかとのことだ。
GDPに対する無形資産投資比率のうち、情報化資産にあたるソフトウェア・データベース投資や研究開発投資の比率は高いが、人的資本投資の比率は最も低く、さらに近年減少している。


(引用)「日本の生産性が低い要因は「付加価値創出力」と「人材育成力」」(ASCII.jp × ビジネス)

 人的資本投資は、生産性向上に寄与することが各研究で裏付けされていることから、それが一つの要因といえる。そして、人的資本投資が進まなかった理由として、「アメリカのように労働市場全体が流動化するのではなく、従来の日本型雇用を踏襲しながら、キャリア上昇が限られる非正規雇用を増やしていったことが、人材育成が進まなかった原因のひとつ」と提起している。

日本的な外注化と多重下請け化の弊害

前述の日本生産性本部の主張には非常に同意する。
以前から日本のIT業界を例に下請け構造やさらにそれが多重的な階層になっていることを指摘してきた。

特にITは自社にノウハウや人材等のリソースが無いため、外注化(アウトソーシング)が中心である。
そうすると、自社の社員ではないため、当然教育コストはかけない。
準委任契約という形で特定業務に対し委託する訳であり、発注者が指示をしてはいけないため、教育といったことが契約上からも難しい(業務上の引継ぎという形であれば問題はないと思われるが)。
そして、これが多重階層になっているため、さらにその傾向を助長している。

ITベンダーの教育体制

 では、外注の所属会社として教育を行っているかというと、大手人材会社であればある程度やっているが、小さい会社は基本的には体力がないこともあり「現場で覚えろ」というスタンスである。
そして、当然自ら新しい技術にキャッチアップする人はいるが、そうでない人の方が圧倒的に多いだろう。
なぜなら、総務省統計局が2022年に発表した社会生活基本調査(令和3年度調査)によれば、日本人の1日の学習時間はわずか平均13分である。

エンゲージメント向上よりも多重構造の改善を

 日本生産性本部の主張としては、「エンゲージメントを高める」ことが提起されている。
それによりマインドセットを高く保つことでモチベーションや生産性を高めカバーできるということである。
それは正しいと思う。

しかし、IT業界という面で見ると外注および多重下請け構造の改善が最優先だと考える。

改めて何が良くないのか。何が生産性を抑え込んでいるのか。

●ストック型の中抜き構造である。
 → 準委任契約という性質上、中抜き業者は毎月不労所得を得ている。
   自動車業界などは、売り切り(フロー)型なのでまだかわいい。
   しかも、中間で組立てなどやっているわけでもなくただのブローカーなのである。

●レガシー化しやすい。
 → 特に外注による開発は責任意識が低く、その会社の運用の定着までを見据えた開発が行われていないケースも多い。
   そして、外注の場合、その開発者に知見などが属人化しやすい。
   さらに、人の定着も難しいため、急な離脱によりノウハウが蓄積しないことにつながる。
   結果、今となって過去の資産をメンテナンスできなくなったり、それを刷新するにも膨大なコストがかかる羽目になる。
   本来はそのコストをもっと生産的で付加価値を生むシステム投資に回せるはずなのに。
   しかもそれを海外勢に支払ってデジタル収支のマイナスを拡大を助長するという。

改善に向けて

 上記の多重構造の改善については、例えば政府により「再委託はx社まで」というような規制は考えられる。
そうすることで、人材の確保は難しくなる可能性はあるため、現在の人材難の中でマッチングを難しくしてしまう。
それは、国としてデータベース化するなどで代替するなどは考え方としてある。
また、開発者自身も会社への所属ということではなく、個人事業主として選択する人も増えるだろうし、その中で競争が生まれ自らのスキルアップへの意識も高まるかもしれない。当然、セーフティネットとなる機能も併せて考えないとならない。

 あとは、人的資本投資の拡大に向けては、内製化を図っていくというのも基本であろう。
国全体として人的資本投資の増加が生産性に寄与するということは、個社で見た場合も同じことが言える。
それを経営者が理解した上で、コアとなる事業を優先して内製化を進めていくということも啓蒙していくのが良いだろう。

以上

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