タグ:

 これまで、ことある度に中抜き構造の指摘を行ってきているが、今回もその話題を取り上げたい。特に、それを改善する方法につながる話ができればと思う。

なぜ日本の下請け構造がダメなのか

 改めて、なぜ日本のIT業界を中心とした中抜き構造を問題視しているのか。
一言でいうと、以下のとおりである。

 日本のIT遅れの原因の一つであり、GDPの重しになっている

 もう少し具体的に言おう。

  • 中間業者は付加価値を生んでいない(GDPへ寄与していない)
  • 中抜きはSESにより継続的な搾取構造を生んでいる(=ストック型)
  • 技術者自身の価値向上とプレゼンス向上の足かせとなっている(技術者への還元不足)
  • IT人材の人的資本投資を抑止している(生産性向上への投資が不足)

日本のIT市場のSESは、このような状態である。
ベンダーは自社でいかに人材のデータベースを充実させるかということに心血を注ぐ。技術者は極力多くの業者に登録することで採用確率を高めようとする。それに対し元請けが自身のネットワークを活かし人材調達を図る。その結果、ベンダーはいかに上流で仕事を得られるかが重要であり、下流の下請けを含むピラミッド階層の中で競争が行われているような状態である。そして、ベンダーとして参入障壁も低く、個人事業主も含め多くの中抜き事業者が乱立している。

そして、多くのベンダーはある意味マージンで利益を上げることができるこの事業形態を何も疑問に思わず、必死に自社の利益の最大化に努めているが、結果として上記のマイナス面に貢献していることに気づいていない。
木を見て森を見ていない状態であり、1企業はそれに気付けないのは世の常である。したがって、そういった外部不経済に対し本来は国が是正してあげなければならないのが本質かと思う。

売り手市場の加速 –> 中抜きの助長

 以下は、総務省が更改した「令和6年版情報通信白書」の資料である。

■令和6年版情報通信白書
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/pdf/index.html

(引用)「デジタル化に関して現在認識している、もしくは今後想定される課題や障壁(各国比較)」(令和6年版情報通信白書 総務省)

 日本のデジタル人材の不足は顕著である。
つまり、発注者にとってはデジタル人材の不足により、良い人材の取り合いの様相を呈しており、それは今後も継続する。つまり、売り手市場ということである。よって、売り手が優位な状態であり、中抜き業者の参入や価格のつり上げといったマイナスの効果を助長する環境が整ってしまっている。したがって、本件の是正は喫緊の課題ということになる。

改善のための施策のヒント

 このようなIT業界の構造を変えるべく、私も以前から国としてマッチングサービスの構築を提言してきた。以下の記事などもご参考にしていただきたい。

その中、今回民間におけるサービスとして、「発注ナビ」というサービスの取り組みについて参考になったので取り上げたいと思う。

「発注ナビ」の方法

まず、IT Mediaで取り上げられていた記事を紹介したい。

■リソース不足のシステム開発会社が「SESや多重下請けしかない」を脱却するには
https://members.techtarget.itmedia.co.jp/tt/members/1906/19/news01.html

ここで紹介されている「発注ナビ」というアプリケーションがある意味改善の方向性を示していると思われる。
ポイントは以下の3点である。いずれも、多重下請けを醸成するポイントをうまく是正するための仕組みとなっている。

1.価格競争の防止

 発注会社として、見積ありきでコンペをかけられるとどうしても価格競争に陥ってしまい、正当な市場価格を押し下げてしまう可能性がある。従来のマッチングサイトは、自動車保険の見積のように先に見積を提示しその結果の比較方式が主流であるが、そうではなく、先に要件を聞きその上で見積もりを行うという正しいアプローチを経ることで、正当で適正な見積価格を提示することを可能としている。

2.営業力が無くても大丈夫

 ここが一番の下請けの課題である営業力の差による機会獲得の影響である。下請け企業は営業力が無いため、発注企業とのコネクションを構築できず下請けに甘んじてしまう状況が多い。ここをある意味発注企業へのコンタクトポイントとして共通プラットフォーム化することで、ベンダー企業がフラットな状態で人材紹介を行えることを目指している。発注企業もこのような人材バンク的なサービスを望んでいるのではなかろうか。共通的なプラットフォームとして発注側事業者自らがベンダーや技術者を選定できること(ベンダー人材の民主化)がやはり望まれている。

3.タイミングよく案件があるとは限らない

 人材の案件の切れ目に運よく案件があるとは限らない。従来では、ベンダーごとにコネクションが異なるため、他のベンダーの人材データに登録することで、仮にn次受けとなっても稼働が空くよりは良いということで下請けを甘んじていた構図であった。それについても、プラットフォーム化することで下流の下請け業者も第1選定候補として常にピックアップされることが可能となる。その結果、下請けの階層を意識することなくタイムリーに市場に投入できるようになる。

まとめ

今回取り上げた「発注ナビ」はあくまで民間のサービスである。
そのため、ITベンダーからの手数料をベースに事業運営する形となる点や、従来の風習を基本とするベンダーや発注業者は当該プラットフォームへスイッチングする動機がないのが実情である。
したがって、やはり国が主導でこのようなサービスを導入することと、ある程度強制的にプラットフォーム化することで本件への対応をドライブしていただきたいと考える。


以上

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

投稿者

onda.masashi@gmail.com

関連投稿